履歴書を書くとき、「このまま正直に書いたら弱く見えるのではないか」「少しぐらい盛った方が通過しやすいのではないか」と悩む人は多いはずです。とはいえ、どこまでが許される盛り方で、どこからが完全な経歴詐称になるのか、その線引きが分からず手が止まってしまうこともあります。
この記事では、20代で転職回数8回、1年間の空白期間ありという汚い職歴のまま30歳で20社以上不採用となったものの、独自の履歴書クリーニング法でわずか1か月のうちに複数の優良企業から内定を獲得した著者が、「履歴書はどこまで盛っていいのか」という疑問に答えながら、安全に自分をよく見せる盛り方と絶対にやってはいけないアウトな盛り方の違いを具体的に解説します。
履歴書はどこまで盛っていいのか 結論と基本スタンス
結論 数字や事実を偽る盛り方は危険だが表現を工夫する盛り方は必要
結論から言うと、履歴書を「全く盛らない」のも「嘘で塗り固めて盛りまくる」のも、どちらもおすすめできません。数字や在籍期間、役職といった客観的事実を偽る盛り方は危険ですが、自分の経験や強みを分かりやすく、魅力的に伝えるための表現の工夫は、むしろ必要だと考えています。
自分を過小評価して淡々と事実だけを書いてしまうと、採用担当者には「特にアピールポイントのない人」として映りがちです。一方で、存在しない実績や役職を作り上げてしまうと、あとで矛盾が出たときに一気に信用を失います。大切なのは、「事実の範囲でどれだけ魅力的に見せられるか」というスタンスを持つことです。
採用担当者が「盛られた履歴書」で本当に嫌がるポイント
採用担当者が嫌がるのは、「話を盛っていること」そのものというよりも、「後から確認したときに明らかに嘘だった」と分かる履歴書です。例えば、誰が見ても分かるような大きな売上数字を勝手に自分の実績にしたり、在籍していない部署や役職を書いてしまうと、信用を一気に失います。
逆に言えば、事実を誇張するのではなく、「分かりにくい事実を整理して伝わりやすくする」という方向性の盛り方であれば、採用担当者にとってもむしろ親切です。重要なのは、「第三者が見ても事実の範囲内と言えるかどうか」「面接で詳しく聞かれても矛盾なく説明できるかどうか」という二つの軸です。
履歴書を盛ってバレたときに起こり得るリスク
選考中に矛盾が発覚した場合の影響
履歴書を盛り過ぎてしまった場合、最初に問題が起きるのは面接の段階です。書いてある内容に興味を持った面接官は、必ず「具体的に教えてください」と掘り下げてきます。このとき、実際の経験と合わない内容を盛っていると、具体的な説明ができず、矛盾が次々に露呈してしまいます。
一度矛盾が見えると、面接官は他の部分についても「この人は他にも盛っているのではないか」と疑いの目で見るようになります。結果として、本来の実力に関係なく「信用できない」という理由だけで不採用になることもあります。せっかく盛って有利に見せようとした履歴書が、逆に足を引っ張る結果になるのです。
入社後にバレたときに一番辛いのは自分自身
仮に盛った内容のまま採用されたとしても、入社後にその嘘が自分を苦しめることがあります。例えば、「マネジメント経験があります」と大きく盛ってしまうと、実際にはやったことがない管理職レベルの仕事を任され、早い段階で実力不足が露呈してしまうかもしれません。
また、在籍期間や職歴を過大に書いていた場合、雇用保険や年金の手続き、前職への確認などで矛盾が発覚する可能性もゼロではありません。そのときに待っているのは、「実力不足」だけではなく「信用を裏切った人」という評価です。一度失った信用を取り戻すのは簡単ではありません。結局、一番つらい思いをするのは自分自身だということを忘れてはいけません。
安全に履歴書を盛るための三つの基本ルール
事実は変えずに「具体化」と「強調」で盛る
安全に履歴書を盛るうえで最も大事なのは、「事実を変えない」ことです。そのうえで、「具体化」と「強調」という二つの方向で盛るのが基本です。
具体化とは、「なんとなく忙しかった」「いろいろやっていた」といった曖昧な表現を、「1日〇件の問い合わせ対応」「週〇本の記事制作」といった具体的な業務内容に言い換えることです。強調とは、その中でも応募先の仕事に直結する部分を前に持ってくることです。
例えば、「雑務をいろいろやっていました」と書く代わりに、「顧客からの電話・メール対応、データ入力、資料作成など、事務全般を幅広く担当」と書けば、やっていることは同じでも、相手に伝わる印象は大きく変わります。
数字は「実績」だけに使い、予測や希望には使わない
履歴書を盛るときに数字を使うと説得力が増しますが、その数字は「実際に出した実績」に限定するべきです。「もし続けていればこれくらい売れたはず」「同僚の数字も含めてこのくらいだった」というような予測や推測の数字を自分の実績として書くと、一気に危険ゾーンに入ります。
安全な盛り方としては、「月間の平均対応件数」「1日あたりの処理件数」「前年同月比での売上伸び率」など、客観的に証拠を示せる数字を用いることです。そして、多少あいまいな部分があっても、「およそ」「約」といった表現を付けることで、誇張ではなく目安として伝えられるようにします。
数字は盛れば盛るほど魅力的に見えますが、その分だけ矛盾が見つかりやすくなります。本当に出した実績だけを、少し分かりやすく見せるくらいに留めるのが賢明です。
他人の功績を自分の手柄のように書かない
ありがちな危険な盛り方が、チームや部署全体で達成した成果を、自分一人の手柄のように書いてしまうパターンです。大きなプロジェクトや売上目標を達成した経験をアピールするのは良いことですが、その際は「自分が担当した役割」と「チーム全体の成果」を分けて書く必要があります。
例えば、「売上〇〇%アップに貢献」という書き方はアリですが、「自分一人の力で売上〇〇%アップ」といった表現は危険です。実際には多くのメンバーが関わっているはずであり、面接で詳細を聞かれたときに簡単に矛盾が露呈してしまいます。
盛るべきは「自分がどう貢献したか」という部分であって、「成果そのものを独り占めすること」ではありません。ここを勘違いしないことが、信用を守りながら履歴書を盛るうえでの基本ルールです。
著者が汚い職歴を「盛り方の工夫」で逆転させた実例
転職回数8回と空白期間をそのまま書いて20社以上落ちた頃
著者である自分も、かつては履歴書の「盛り方」を完全に間違えていました。20代で転職回数8回、途中に1年間の空白期間という汚い職歴を抱えたまま、30歳で勤務先が廃業したことをきっかけに求職活動を始めましたが、結果は20社以上連続で不採用でした。
当時の履歴書は、事実をそのまま並べただけで、「なぜそうなったのか」「今後どうしたいのか」の説明がほとんどありませんでした。短期離職も空白期間も、ただのマイナス要素として並べられ、採用担当者に「すぐ辞める人」「ブランクの長い人」という印象だけを残していたのです。
それでも、「嘘を書いてはいけない」という意識が強すぎて、必要な表現の工夫まで封印していたのが、今振り返ると大きな失敗でした。
履歴書クリーニングで「盛る方向」を変えて内定を取ったポイント
状況を変えるために取り組んだのが、自分なりの履歴書クリーニングです。これは、事実を変えずに「見せ方」と「強調するポイント」を徹底的に調整する作業でした。
具体的には、まず全ての職歴を棚卸しし、その中から「一貫している経験」や「応募先に評価されそうなポイント」を抜き出しました。転職回数が多かったとしても、振り返ると「顧客対応」「事務処理」「営業補助」など、共通する業務がいくつもありました。そこで、「短期離職を繰り返した人」から「顧客対応を中心に経験を積んできた人」という見せ方に切り替えたのです。
また、空白期間についても、「何もしていなかった時間」ではなく、「資格勉強や情報収集、知人の手伝いをしながら次のキャリアを模索した期間」として具体的に書き直しました。こうして、マイナスに見えていた部分を「ストーリーの一部」として盛り方を変えたことで、書類通過率は大きく改善し、最終的には1か月で複数の優良企業から内定を得ることができました。
今すぐ使える 履歴書を上手に盛る具体的テクニック
業務内容をただの作業列挙から「成果が伝わる文章」に変える
多くの人がやってしまうのは、職務内容を「電話対応、来客対応、データ入力」などの作業名だけで並べてしまう書き方です。これでは、どれだけその仕事を頑張っていたのか、どんな規模感でやっていたのかが伝わりません。
そこで、同じ事実でも次のように書き換えるだけで、印象を盛ることができます。「1日平均〇件の電話問い合わせに対応し、内容をデータベースに入力」「営業担当が商談に集中できるよう、見積書作成や資料準備を担当」といったように、量と目的を入れて書くのです。
やっていることは同じでも、「どれくらい」「何のために」を加えることで、一気にプロらしさが増します。これは誇張ではなく、事実の具体化という意味での盛り方なので、安全に使えるテクニックです。
短所に見える経験を「強みに変えて盛る」言い換え方
短期離職や異業種転職が多いと、それだけでマイナスに見えがちですが、言い換え次第で強みに変えることもできます。例えば、「仕事が長続きしなかった人」ではなく、「複数の業界や職種を経験し、幅広い視点を持っている人」として表現することも可能です。
もちろん、ただポジティブに言い換えるだけでは弱いので、「その中で何を身につけたのか」をセットで書きます。「飲食、販売、コールセンターなど複数の現場で接客を経験し、初対面のお客様とも短時間で信頼関係を築けるコミュニケーション力を養った」といった表現にすれば、同じ経歴でも伝わり方は大きく変わります。
このように、短所に見える事実に対して、「だからこそ得られた強み」を一緒に書くことが、履歴書を前向きに盛るうえでの重要なポイントです。
まとめ
履歴書を盛ること自体は悪いことではありませんが、数字や事実を偽るような盛り方は、信用を失う大きなリスクがあります。一方で、事実の範囲内で経験を具体化し、応募先が評価しやすい形に整理して見せる盛り方は、キャリアを切り開くために必要なスキルだと言えます。
転職回数8回と1年間の空白期間という汚い職歴でも、盛る方向を「嘘で飾る」から「事実を魅力的に伝える」へと切り替えることで、内定を勝ち取ることは十分に可能です。大切なのは、自分の経歴にコンプレックスを抱いたまま隠すのではなく、「その経験から何を学び、どんな価値を提供できる人になったのか」を、恐れずに言葉にしていくことです。
履歴書を盛るかどうかで悩んだときは、「後から詳しく聞かれたときに、堂々と同じ話ができるか」を基準にしてみてください。そのラインを守りながら、あなたの強みがきちんと伝わるように盛っていけば、履歴書は必ずあなたの味方になってくれます。


コメント