履歴書や職務経歴書を書こうとしたとき、「この空白期間はさすがにマズい」「少しくらいなら嘘で埋めないと通らないのでは」と悩んだ経験はないでしょうか。ニート期間、病気療養、家事・介護、メンタル不調など、理由はさまざまでも、「空白」があるだけで不利になるのではという不安は、多くの人が抱えています。
この記事では、20代で転職回数8回、1年間の空白期間ありという汚い職歴のまま30歳で20社以上不採用になったものの、独自の履歴書クリーニング法でたった1か月のうちに複数の優良企業から内定を獲得したプロの転職アドバイザーが、「空白期間に嘘を書いてごまかすべきか」というテーマについて、危険なラインと安全な見せ方の違いをPREP法で解説します。
空白期間に嘘を書くべきか 結論と基本スタンス
結論 空白期間を嘘で埋めるのは高リスクだが「見せ方の工夫」は必須
結論から言うと、空白期間に「存在しない職歴」や「実際より長い在籍期間」を書き足すような嘘はおすすめできません。短期的には安心できても、公的記録や前職との照合で矛盾が出た瞬間に、一気に信用を失うリスクが高いからです。
ただし、「嘘をつかない＝何も工夫しない」が正解でもありません。年月日の書き方を調整したり、空白期間に実際に行っていた勉強や家族のサポートを「活動」として書き起こしたりすることで、事実をねじ曲げずに空白の印象を軽くすることは十分に可能です。
つまり、「嘘で上塗りするかどうか」ではなく、「事実の範囲でどこまで見せ方を整えられるか」が、本当に考えるべきポイントです。
嘘で消すより「空白の中身を掘り起こす」方が現実的
多くの人は、空白期間を「消すか、正直にさらすか」の二択で考えがちですが、現実的には「中身を掘り起こして意味づけする」という第三の選択肢があります。
例えば、資格勉強、職業訓練、家事・育児、介護、短期バイト、体調の立て直しなど、空白に見える期間でも何かしらの活動はしていることがほとんどです。それを「ニート」「何もしていなかった」と一言でまとめてしまうから、余計にマイナスに見えてしまいます。
嘘をつく前に、「本当は何をしていたのか」「どう書けば応募先にとって意味のある時間として伝わるか」を掘り起こすことが、空白期間対策の出発点になります。
空白期間の嘘がバレる典型パターンと起こり得るリスク
公的記録や前職との矛盾から発覚するケース
空白期間をごまかすために架空の職歴や在籍期間の水増しを行った場合、最も分かりやすい矛盾が出るのが、公的な記録との食い違いです。正社員として働いていれば、雇用保険や厚生年金の加入履歴に会社名と期間が残ります。
新しい会社に入社するとき、人事担当が手続きを進める過程で過去の加入履歴を確認し、「履歴書に書いていない会社がある」「書いてある期間と加入期間が明らかに違う」といったズレに気づくことがあります。前職への在籍確認や、退職証明書・離職票の提出を求められたときにも、同様の矛盾が表に出やすくなります。
こうした場面で一度「嘘」が疑われると、その後にどれだけ丁寧に説明しても、完全に信用を取り戻すのは難しくなります。
バレた瞬間に失うのは経歴ではなく「信用」そのもの
空白期間の嘘がバレたときに一番大きいのは、「職歴が悪く見えること」ではなく、「嘘をつく人だ」と見なされることです。企業が本当に恐れているのは、ブランクの有無以上に、「重要な情報を隠す人」「都合よく話を変える人」です。
採用後に嘘が発覚すれば、内定取り消しや懲戒解雇など、厳しい対応を取られる可能性もあります。たとえそこまで至らなくても、「この人には重要な仕事を任せにくい」という評価はなかなか消えません。
空白期間をごまかすための一つの嘘が、その後の長いキャリア全体に重くのしかかるリスクを持っていることは、冷静に受け止めておく必要があります。
プロの転職アドバイザーが経験した 空白期間と短期離職まみれからの逆転ストーリー
転職回数8回と1年の空白期間で20社以上不採用だった頃
著者自身、20代で転職を8回繰り返し、その途中で約1年間の空白期間を経験しました。30歳のとき、勤務先の廃業をきっかけに求職活動を始めましたが、結果は20社以上連続で不採用。短期離職と長い空白が「落とす理由」として強烈に機能していた時期です。
当時の履歴書では、その1年間を単に「無職」「求職活動」とだけ書いていました。実際には資格の勉強や家族の手伝い、短期アルバイトなどをしていたにもかかわらず、それらを一切書かず、「何もしていない空白」に見える状態のまま出していたのです。
この経験から、「嘘はついていないのに落ち続ける履歴書」と「嘘をつかずに通過率を上げる履歴書」の差は、空白期間の中身の見せ方にあると痛感しました。
嘘を使わず空白期間を「準備期間」に変えた履歴書クリーニング法
そこで取り組んだのが、履歴書クリーニングという考え方です。やったことはシンプルで、「空白期間の1年間に実際にやっていたことを、思いつく限り全て書き出す」という棚卸しでした。
資格のテキストで勉強した日、ハローワークに通った日、家族の介護や家事を手伝った日、短期バイトで生活費を稼いだ日、業界研究のために本や記事を読み漁った日など、一見大したことがないように思える行動も一つひとつ拾い上げました。
そのうえで、「20XX年〜20YY年 次の就職に向けて〇〇の学習と△△の実務補助に取り組む」「家族のサポートを行いながら、再就職に向けて体調の立て直しとスキル習得に専念」といった形で表現を整え、空白期間を「準備期間」として再定義しました。嘘は一切つかず、事実の切り取り方だけを変えた結果、書類通過率は目に見えて改善し、最終的に1か月で複数の内定を得ることができました。
空白期間に嘘を書かずに弱点を薄める三つのテクニック
月単位ではなく年単位で期間をまとめて記載する
一つ目のテクニックは、「書き方の粒度を調整する」ことです。職歴を「20XX年4月〜20YY年3月」のように月単位で細かく書くと、数か月の空白までくっきり見えてしまいますが、フォーマットや応募先のルールが許すなら、「20XX年〜20YY年」と年単位でまとめる方法があります。
例えば、実際には20XX年3月に退職し、翌年20YY年2月に入社した場合、月単位で書けば11か月の空白が目立ちますが、「20XX年退職・20YY年入社」と記載すれば、ぱっと見の印象としてはブランクが短く感じられます。
もちろん、在籍年数を水増しするような書き方は避けるべきですが、許容される範囲で「解像度を落とす」ことは、事実をねじ曲げない安全な工夫と言えます。
勉強や家事・介護などを「活動」として言語化する
二つ目は、「空白期間＝何もしていない」と扱わないことです。資格勉強、オンライン講座、家事・育児、親の介護、通院や療養など、働いていない期間にも何かしらの活動はあります。
例えば、次のような書き方が考えられます。
「20XX年〜20YY年 家族の介護を行いながら、再就職に向けて簿記の学習を継続」
「20XX年〜20YY年 体調回復に専念しつつ、IT基礎スキル習得のためオンライン講座を受講」
このように書けば、「何もしていない空白」ではなく、「次のステップに備えた準備の時間」として受け止めてもらいやすくなります。重要なのは、事実を丁寧に言葉に変えることです。
短期の仕事や非正規をまとめて一つの経験として整理する
三つ目は、「空白の前後にある短期の仕事の扱い方」です。空白期間の前後で数週間〜数か月のバイトや派遣を転々としている場合、それを全て細かく書くと、「短期離職を繰り返している人」という印象が強くなってしまいます。
そこで、「20XX年〜20YY年 飲食・販売の現場で接客業務に従事（複数店舗）」「20XX年〜20YY年 派遣社員として複数社で一般事務・データ入力業務を担当」といったように、内容が近い仕事をまとめて一つの経験として記載する方法があります。
これにより、「たくさん辞めた人」というイメージを抑えつつ、「どの分野でどんな役割を担ってきたのか」だけを採用側に伝えることができます。
それでも空白期間をごまかしたくなった時に考えるべき現実
嘘で埋めると入社後に「期待値」と「実力」のギャップに苦しむ
たとえ空白期間の嘘がバレずに採用されたとしても、次の問題として浮かび上がるのが、「期待値」と「実力」のギャップです。
例えば、「実務経験3年」と水増しして書いた場合、入社後すぐに3年目レベルの仕事を任されるかもしれません。実際には経験が浅いと、周囲の期待に応えられず、毎日が苦しい状態になります。「マネジメント経験あり」と盛ってしまえば、リーダー業務を任されたときに、自分の首を自分で絞めることになりかねません。
嘘は一瞬の不安を消してくれますが、その後長く続くプレッシャーと戦わなければならないことは、冷静に想像しておいた方がいいでしょう。
一度ついた嘘は転職を重ねるほど自分の首を絞めていく
もう一つの現実は、「一度ついた嘘は、次の転職のたびに自分を縛る鎖になる」ということです。最初の転職で職歴を盛ってしまうと、その内容を前提に次の履歴書や職務経歴書を書かざるを得なくなります。
どこかのタイミングで正直な経歴に戻そうとすると、「過去の書類と違う」ことがバレるリスクが高まります。結果として、「最初の小さな嘘」を守るために、嘘を塗り重ね続けなければならない状況に陥りやすくなります。
空白期間をごまかすための一時的な詐称が、10年単位で自分の自由を奪い続ける可能性があることは、決して軽く見ない方がいいポイントです。
空白期間に悩む人が今すぐやるべき三つのステップ
空白期間の棚卸しをして事実ベースの材料を洗い出す
最初のステップは、「空白期間に何をしていたか」を徹底的に棚卸しすることです。「何もしていなかった」という思い込みを一度脇に置き、カレンダーや写真、メモ帳などを見返しながら、日常レベルの行動まで書き出してみてください。
資格勉強、ネットでの情報収集、家事、育児、介護、通院、リハビリ、短期バイト、知人の仕事の手伝いなど、一つひとつは小さく見えても、全体を眺めると「準備」「回復」「貢献」といったテーマが見えてきます。
この棚卸し作業が、「嘘に頼らず空白期間を語る」ための土台になります。
応募先の仕事と結びつく要素だけを拾いストーリー化する
次に、棚卸しした内容から、応募先の仕事と関係が深い要素を選び出します。事務職ならパソコンや数字に触れていた経験、接客・販売職なら人と接する場面を意識的に増やした行動、介護・福祉職なら家族のケア経験などが該当します。
それらを、「だから今この仕事を選んでいる」「この経験があるからこそ御社で役立てる」といった流れに組み立て、自己PRや志望動機に落とし込んでいきます。履歴書の職歴欄には簡潔に、面接や職務経歴書では具体的に、というように、見せる場所によって情報量を調整すると効果的です。
履歴書・面接・ネット上のプロフィールを一貫させる
最後に、履歴書、職務経歴書、面接で話す内容、転職サイトやSNSのプロフィールなどに、大きな矛盾がないかを必ずチェックします。
どこか一つだけ別のストーリーを書いてしまうと、「どれが本当なのか」と疑われるきっかけになります。空白期間の扱いについても、「職歴には書かないが、自己PRではこう説明する」「ネットプロフィールも同じ期間は活動内容をそろえる」といった形で、方針を統一しておきましょう。
一貫したストーリーがあれば、「空白はあるけれど、自分の過去ときちんと向き合っている人」として評価されやすくなります。
まとめ
空白期間に嘘を書いて埋めることは、一見すると手っ取り早い解決策に見えますが、公的記録や前職との矛盾、入社後の期待値とのギャップなど、長期的には大きなリスクを抱える選択です。バレるかどうかだけで判断すると、いざ発覚したときに「経歴の汚さ」以上に「信用を失った」という重い代償を払うことになりかねません。
一方で、空白期間そのものは「悪」ではなく、問題になるのは「その期間に何をしていたのかを説明できない状態」です。実際に行っていた勉強や家族のサポート、体調の回復などを丁寧に棚卸しし、応募先の仕事と結びつく形で言語化すれば、嘘をつかなくても空白期間の印象を大きく変えることができます。
転職回数8回と1年の空白期間という汚い職歴からでも、事実を変えずに「見せ方」と「語り方」を整えることで複数の内定を得られたように、空白期間に悩む人が本当に取り組むべきなのは、「嘘を考えること」ではなく、「事実の使い方を磨くこと」です。
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