ネット上には「履歴書嘘書いてもバレない」という刺激的な言葉が溢れています。空白期間が長かったり転職回数が多かったりすると、「少しくらい盛らないと通過しないのでは」と心が揺れるのも無理はありません。
しかし、20代で転職回数8回、1年の空白期間ありという汚い職歴のまま30歳で20社以上落ちた後、嘘に頼らない履歴書クリーニングで複数内定を取った立場から断言できるのは、「バレない嘘」を探すより、「嘘をつかずに通る見せ方」を作った方が、短期的にも長期的にも得だという現実です。
履歴書に嘘を書いてもバレないのか 結論と基本スタンス
結論 一時的にバレないケースはあるがリスクは想像以上に大きい
履歴書の嘘が「その場では」バレないことは確かにあります。前職への確認をほとんどしない会社もあれば、雇用保険などの記録を細かく見ない会社もあるからです。
ただし、それは「たまたま見つかっていないだけ」という状態であり、部署異動、人事制度の見直し、社外とのやり取りなど、後から経歴が参照される場面はいくらでもあります。そこで矛盾が露呈した瞬間、解雇や内定取り消しだけでなく、自分自身のキャリア観にも深い傷が残りやすくなります。
「バレるかどうか」より「信用を失った時に失うもの」の方が重い
多くの人が気にするのは「嘘がバレる確率」ですが、本当に重く見るべきなのは「バレた時に何を失うか」です。
少しの期間のごまかしや、職歴の水増しが発覚しただけでも、「経歴の綺麗さ」より先に「大事な所で嘘をつく人かどうか」が問題になります。一度信用を失うと、その企業だけでなく、転職活動全体で「自分は嘘をついてここに立っている」という感覚に縛られ続けることになりかねません。
「履歴書嘘書いてもバレない」が広まりやすい理由
バレた人の声は表に出にくく「うまくいった話」だけが目につく
ネット上では、「嘘をついて失敗した話」より「盛ってもバレなかった話」の方が拡散されやすくなります。人は自分の黒歴史をわざわざ詳細に書きたがりませんし、会社とのトラブルになったケースはそもそも第三者に話せないことも多いからです。
その結果、「たまたま何も起きていない人」の体験談だけが目につき、「意外と大丈夫なんだ」という錯覚が生まれます。しかし、見えていない失敗例がどれだけあるかは、外からは分かりません。
企業側が「薄々気づいていても黙認している」ケースも混ざっている
もう一つの盲点は、「本人はバレていないと思っているが、企業側は違和感を持ったまま採用している」パターンです。
採用担当者は経歴に多少のズレや不自然さを感じても、「業務には支障がなさそうだ」と判断すれば、あえて深追いしないことがあります。この場合、本人は「履歴書の嘘はバレなかった」と思っていますが、人事や上司の頭には「少し話を盛るタイプかもしれない」という前提が残っています。
表向きは問題なくても、昇進や重要案件のアサインといった場面で、「信用」の差がじわじわ効いてくることは少なくありません。
実際に履歴書の嘘が問題になる典型パターン
雇用保険や年金などの公的記録との矛盾
正社員として働いていれば、雇用保険や厚生年金への加入記録が残ります。転職先の人事が手続きを進める際に、過去の事業所名や加入期間が一覧で見えることもあります。
そこで、履歴書に書いていない会社の名前が出てきたり、記載した在籍期間と明らかに合わない加入期間が表示されたりすると、「なぜ違うのか」という疑問が自然と生まれます。
前職への在籍確認や業界内の人づての情報
採用プロセスの中で、前職への在籍確認を行う企業もあります。退職日や在籍期間、担当していた業務の概要などが確認されると、履歴書の情報との食い違いが浮かび上がります。
また、業界が狭い場合や、取引先同士で人事担当が顔見知りというケースでは、「あの人、以前そちらにいたはずだが履歴書には書いていない」といった情報交換が行われることもあります。
著者が見た「嘘に頼る人」と「汚い職歴のまま受かる人」の決定的な違い
転職回数8回と1年の空白期間で20社以上落ちた時に考えていたこと
20代で転職8回、途中で1年の空白期間という職歴を抱えたまま、30歳での求職活動では20社以上不採用が続きました。その頃は、「正直に書いても落ちるなら、少しぐらい嘘を書いた方が得なのでは」と何度も考えました。
しかし同時に、一度嘘をついたら、次の転職でも同じ嘘を引き継がないといけないこと、どこかのタイミングで整合性が取れなくなることが怖く、踏み切ることはできませんでした。
事実を変えずに「見せ方」だけを変えたら状況が一気に変わった
そこで選んだのは、「事実は変えずに、見せ方と強調するポイントだけを変える」という方法でした。
全ての職歴を書き出し、正社員・非正規を問わず「顧客対応」「事務処理」「営業サポート」といった共通の軸を見つけ、バラバラな経歴を「顧客対応と事務を中心に経験を積んできた人」というストーリーに組み直しました。
空白期間についても、何もせずに過ごした一年ではなく、「資格勉強や家族のサポート、短期バイトなどを通じて次に備えた期間」として言い換えたところ、書類通過率が明らかに変わり、1か月で複数内定を獲得することができました。
履歴書に嘘を書かずに「弱点を薄める」三つのテクニック
月単位ではなく年単位で期間をまとめる
フォーマットや募集要項が許すなら、職歴を月単位ではなく年単位で記載することで、数か月単位の空白を目立たなくすることができます。
例えば、「20XX年4月退職 20YY年1月入社」と書くと9か月のブランクがはっきり見えますが、「20XX年退職 20YY年入社」と年だけを記載すれば、ぱっと見の印象はかなり変わります。
もちろん、在籍期間を水増しするような嘘は論外ですが、「どの粒度で書くか」を調整すること自体は、事実をねじ曲げない範囲の工夫です。
空白期間の中身を「活動」として言語化する
空白期間を「何もしていなかった」と表現するから、余計にマイナスに見えます。
実際には、資格勉強、職業訓練、家事や育児、家族の介護、短期バイト、通院やリハビリなど、何かしらの活動をしているはずです。
それらを、「家族のサポートを行いながら再就職に向けて簿記の勉強を継続」「体調回復に専念しつつ、事務職への転職を目指してパソコンスキルを習得」といった形で書き起こすことで、空白を「準備期間」に変えることができます。
短期の職歴や非正規は「まとめて一つの経験」として整理する
短期離職やアルバイト、派遣を細かく並べると、「すぐ辞める人」という印象が強くなります。
そこで、「20XX年〜20YY年 飲食・販売の現場で接客業務に従事(複数店舗)」「20XX年〜20YY年 派遣社員として複数社で一般事務・データ入力を担当」といったように、似た経験をまとめて一つの職歴として表現する方法があります。
これなら、事実を隠さずに、「どの分野でどんな役割を担ってきたか」だけを伝えられます。
それでも「少しくらいの嘘なら」と思った時に考えるべきこと
盛った内容に自分がついていけるかどうか
仮に、嘘がバレなかったとします。「マネジメント経験あり」と書けば、入社後すぐにチームを任されるかもしれませんし、「実務経験3年」と水増しすれば、そのレベルの仕事が割り振られます。
その時に、自分の実力が追いつかなければ、毎日が苦痛になり、結局また短期離職に逆戻りする可能性があります。
一度ついた嘘は次の転職で自分の首を絞める
最初の転職で職歴を盛ってしまうと、その設定を前提に次の履歴書や職務経歴書を書かざるを得なくなります。
どこかのタイミングで正直な経歴に戻そうとすると、「過去に出した書類と違う」という矛盾が発生しやすくなり、「あの時点で嘘をついていたのでは」と疑われる原因になります。
短期的な安心のための一行が、10年単位で自分の自由を縛り続けることも珍しくありません。
「汚い職歴」でも嘘なしで戦うための三つのステップ
全職歴を棚卸しして「応募先に関係する経験」を抜き出す
まずは、正社員・契約・派遣・アルバイトを含め、これまでの職歴とその仕事内容をすべて書き出します。
そのうえで、応募したい仕事とつながるものだけに印を付け、「この会社では顧客対応」「この会社では事務処理」といったように、役割ベースで整理していきます。
空白期間と短期離職を「事実・反省・今後の対策」で説明できるようにする
ブランクや短期離職の理由は、「事実は何か」「自分の反省は何か」「今後どう変えるのか」をセットで準備しておきます。
例えば、「仕事内容のイメージが甘く、短期離職になってしまった(事実)。同じ失敗を繰り返さないよう、仕事選びの軸を見直した(反省)。今回は〇〇という理由で御社を選んでいる(今後)」という形です。
履歴書・面接・ネット上のプロフィールを一貫させる
履歴書と職務経歴書、面接での話、転職サイトやSNSのプロフィールの内容は、細部の表現は違っても「大枠」が一致していることが重要です。
どこか一つだけ大きく盛っていたり、過去と現在で全く違う経歴を書いていたりすると、「どれが本当なのか」という疑念につながります。
まとめ
「履歴書嘘書いてもバレない」という言葉は、一見すると「汚い職歴」や長い空白期間を持つ人にとって、甘い誘惑に見えます。しかし、実際にはバレていないだけの状態や、企業側が違和感を抱えたまま黙認しているケースも多く、発覚した瞬間に失うものは想像以上に大きくなります。
一方で、履歴書に嘘を書かなくても、期間の書き方や職歴のまとめ方、空白期間の意味づけを工夫することで、マイナスを大きく和らげることは十分に可能です。汚い職歴からでも、事実を変えずに「見せ方」と「語り方」を整えることで複数内定を取れたように、本当に探すべきなのは「バレない嘘」ではなく、「事実を武器に変える方法」です。


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