「前職で体調を崩して傷病手当金を受給していた。この事実が転職先にばれたら、内定を取り消されるのではないか」
そのような不安を抱えて、夜も眠れない日々を過ごしている方は非常に多いです。私自身、20代で8回の転職を繰り返し、その過程で1年間の空白期間を作ってしまった経験があります。30歳で再就職活動をした際には、過去の経歴が足かせとなり、20社以上から不採用通知を受け取りました。働けない期間があることの焦りや、それを隠したいという心理は痛いほど理解できます。
特に傷病手当金を受給していた事実は、「健康面に問題がある」と判断されるリスクに直結するため、できれば新しい会社には知られたくないのが本音でしょう。
傷病手当金は転職先にはバレない
結論から申し上げますと、傷病手当金を受給していたことは転職先にバレることはまずないです。また、傷病手当金を受給していたということは健康でないということを自白しているということなので、絶対に転職先に言わないほうがいいです。特にうつ病などの精神疾患の場合、病んでいる人を新しく雇いたがるような会社は存在しないので隠し通してください。
傷病手当をもらっていたというデータそのものが、自動的に転職先に通知されることはありません。しかし、源泉徴収票や住民税といった「お金」の手続きを通じて、間接的にばれてしまうリスクは確実に存在します。
この記事では、傷病手当金の受給がばれる具体的なメカニズムを解説するとともに、ばれるリスクを最小限に抑えつつ、私の実体験に基づいた「履歴書クリーニング法」を使ってホワイト企業への内定を勝ち取るための戦略をお伝えします。
傷病手当金の受給履歴自体は転職先の会社に直接ばれることはない
まず、多くの人が最も恐れている「前職の健康保険組合や役所から、新しい会社に連絡が行くのではないか」という点について解説します。この点に関しては、基本的に安心していただいて問題ありません。日本の社会保険システムと個人情報保護の仕組み上、直接的な通知が行われることはありません。
健康保険組合や協会けんぽから新しい会社への通知は行われない
傷病手当金は、加入していた健康保険組合や協会けんぽから支給されるものです。あなたが転職して新しい会社の健康保険に加入したとしても、前の保険組合と新しい保険組合(または協会けんぽ)の間で、個人の詳細な受給履歴や病歴に関するデータを勝手に共有することはありません。
健康保険の切り替え手続きにおいて、会社が行うのはあくまで「資格取得」の手続きです。過去にどのような給付を受けていたか、どの病院に通っていたかといった情報は、資格取得の手続きには不要な情報であり、新しい会社の人事担当者が閲覧できるシステムにはなっていません。したがって、「システム上で自動的にばれる」ということは仕組み上あり得ないのです。
個人情報保護法の観点から病歴や受給歴は厳重に守られている
病歴や給付金の受給歴は、個人情報の中でも特に慎重な取り扱いが求められる「要配慮個人情報」やそれに準ずる情報として扱われます。本人の同意なく、第三者(この場合は転職先の企業)にこれらの情報を提供することは、法律で固く禁じられています。
たとえ転職先の人事担当者が、前職の会社や加入していた健康保険組合に電話をかけて「この人は傷病手当金をもらっていましたか?」と問い合わせたとしても、まともな組織であれば回答を拒否します。もし回答してしまえば、それは重大なコンプライアンス違反となり、訴訟問題に発展する可能性があるからです。
マイナンバーによって会社が受給歴を照会することも不可能
マイナンバー制度の導入により、「マイナンバーを通じて全ての情報が会社に筒抜けになるのではないか」と心配される方もいます。しかし、現状の制度において、民間企業がマイナンバーを使って従業員の医療情報や社会保険の給付履歴を照会することはできません。
企業がマイナンバーを使用できる範囲は、税金や社会保険の手続きなど、法律で定められた目的に限定されています。人事担当者がマイナンバーを端末に入力しても、あなたの過去の傷病手当金の受給歴が画面に表示されるようなことはありませんので、この点については過度な心配は不要です。
それでも傷病手当金の受給がばれてしまう3つの決定的なルート
直接的なデータ通知はないものの、現実には「ばれてしまう」ケースが後を絶ちません。それは、入社後の事務手続きにおいて提出する書類に、受給していた事実を示唆する痕跡が残ってしまうからです。人事や経理の担当者は、数字の違和感に敏感です。ここでは、具体的にどの書類から発覚するのかを解説します。
源泉徴収票の年収額が在籍期間に対して極端に少ない矛盾
最も発覚のリスクが高いのが「源泉徴収票」です。年の途中で転職した場合、新しい会社で年末調整を行うために、前職の源泉徴収票を提出する必要があります。源泉徴収票には、その年の1月1日から退職日までに会社から支払われた給与の総額が記載されています。
ここで重要なのは、傷病手当金は「非課税所得」であるという点です。つまり、傷病手当金として受け取った金額は、源泉徴収票の給与支払金額には含まれません。
例えば、半年間休職して傷病手当金を受け取っていた場合、その期間の給与所得はゼロになります。その結果、源泉徴収票に記載される年収額は、実際に在籍していた期間から想定される金額よりも極端に低くなります。人事担当者がこれを見て「在籍期間のわりに年収が少なすぎる。数ヶ月間、無給の期間(休職期間)があったのではないか?」と推測することで、休職の事実がばれてしまいます。
住民税の徴収額が低すぎることで経理担当者に空白期間が露見する
次に危険なのが「住民税」です。住民税は前年の所得に基づいて計算され、翌年の6月から給与天引き(特別徴収)されます。転職先の会社は、あなたの居住する市区町村から「住民税決定通知書」を受け取り、それに基づいて毎月の給与から税金を天引きします。
もし前年に長期間休職しており、給与所得が少なかった場合(傷病手当金は所得に含まれないため)、翌年の住民税額は大幅に安くなります。同年代や同程度の給与水準の社員と比較して、住民税が極端に安い場合、経理担当者は「前年の所得が異常に低い」ことに気づきます。
そこから、「前年は働いていない期間があったのか、あるいは休職していたのか」という疑念を持たれることになります。特に、前職を退職してからブランクなしで入社したにもかかわらず住民税が安い場合は、在職中の休職が濃厚であると判断されやすくなります。
入社後の健康保険証発行手続きや傷病手当金の継続受給による発覚
もしあなたが、退職後も傷病手当金の「継続給付」を受けている場合、これは確実にばれます。なぜなら、健康保険法上、傷病手当金と給与は同時に満額を受け取ることができないなどの調整が必要になるケースがあるほか、新しい会社で健康保険に加入すれば、そちらの情報との整合性が問われるからです。
また、極めて稀なケースですが、自社の健康保険組合(大企業などが独自に設立している組合)を持つ企業に転職し、偶然にも前職と同じ健康保険組合であった場合、組合内部のデータとして過去の履歴が残っている可能性があります。この場合、組合から人事部へ直接情報がいくことは原則ありませんが、組合を通じた手続きの中で担当者が気づく可能性はゼロとは言い切れません。
ばれるリスクを最小限に抑えるための書類提出時の対策と心構え
完全に隠し通すことは難しいものの、リスクをコントロールすることは可能です。書類提出を求められた際に慌てず対応できるよう、事前の対策と心構えを持っておくことが重要です。
源泉徴収票の提出を求められた際の「給与が少なかった理由」の答え方
源泉徴収票の提出は法的な義務に近い手続きであり、拒否することは不自然です。「紛失した」と言い張って自分で確定申告をする方法もありますが、入社早々に経理担当者の手を煩わせることは、別の意味で悪目立ちします。
もし源泉徴収票の金額の低さを指摘された場合は、必ずしも「うつ病で休職していました」と正直に言う必要はありません。嘘をつかずに、かつ詳細を伏せる回答を用意しておきましょう。
例えば、「体調を崩して一時的に休職(無給休暇)を取得していましたが、現在は完治しております」と伝えるのが無難です。具体的な病名まで言う義務はありません。また、「家庭の事情で、数ヶ月間時短勤務や無給の休暇を取得していました」といった説明も考えられますが、嘘をつくと後で辻褄が合わなくなるリスクがあるため、やはり「体調不良だったが今は治った」というスタンスが最もリスクが低いです。
住民税を普通徴収(自分で納付)に切り替える手続きとその限界
住民税からばれるのを防ぐ方法として、住民税の納付方法を「特別徴収(給与天引き)」から「普通徴収(自分で納付)」に切り替えるという手段があります。退職時に手続きを行うか、確定申告の際に選択することで可能です。
普通徴収にすれば、会社に住民税決定通知書が届かない(または税額決定通知書に所得の詳細が記載されないタイプが届く)ため、金額からばれるリスクは減ります。しかし、多くの企業では事務処理の効率化や法令遵守の観点から、全従業員の特別徴収を原則としています。「自分だけ普通徴収にしたい」と申し出ること自体が、「副業があるのか?」「何か隠しているのか?」と怪しまれる原因になります。
この方法は、自治体の対応や会社の方針によって使えるかどうかが決まるため、確実な回避策とは言えません。
「ばれる」こと自体よりも「働ける状態か」を証明することの重要性
ここで視点を変えてみましょう。企業が最も恐れているのは、「あなたが過去に傷病手当金をもらっていたこと」そのものではありません。「入社してもまたすぐに体調を崩して休んでしまうのではないか」という未来のリスクです。
つまり、書類から休職の事実がばれたとしても、現在が健康であり、業務に支障がないことを証明できれば、内定取り消しや解雇といった最悪の事態は避けられます。隠すことに必死になって挙動不審になるよりも、「過去にはそういう時期もあったが、今は問題ない」と堂々としている方が、人事担当者に安心感を与えます。
メンタル不調などで受給していた過去をプラスに変える履歴書戦略
私は20代でボロボロの職歴を持ち、20社以上落ちた経験から学びました。ネガティブな要素は、隠すよりも「克服した経験」として語るほうが、結果的に信頼を得られるということです。傷病手当金を受給していた過去も、戦略次第で武器に変えられます。
20社落ちた私が実践した「完治」と「再発防止」のアピール術
もし面接などで休職について触れざるを得ない場合、あるいは入社後に説明が必要になった場合、私は以下の3点をセットで伝えるようにしました。
1. **完治の事実**:医師から就労可能の診断を受けており、服薬の必要もない(あるいは業務に影響ない)こと。
2. **原因の分析**:なぜ体調を崩したのか、その原因(過重労働、環境の変化など)を客観的に理解していること。
3. **再発防止策**:自分のストレスサインを把握し、早めの対処やセルフケアができるようになっていること。
「一度倒れた経験があるからこそ、健康管理の重要性を誰よりも理解しており、長く安定して働けるための自己管理を徹底しています」と伝えるのです。これは、何も挫折を知らない人には言えない、説得力のある自己PRになります。
正直に話すべきタイミングと隠し通すリスクの天秤
履歴書の段階でわざわざ「傷病手当金受給」と書く必要はありません。書類選考ではスキルと経験をアピールし、まずは面接に呼んでもらうことを最優先します。
しかし、最終面接や健康診断のタイミング、あるいは入社手続きの直前など、どこかのタイミングで聞かれたら正直に答える覚悟を持つべきです。入社後に源泉徴収票でばれて、「嘘をついていた」と思われると、社内での信用を一気に失います。
私がホワイト企業に入社できた時は、最終面接の逆質問のタイミングなどで、「過去に体調を崩した時期がありましたが、現在は完治しており、御社の環境であれば長く貢献できると確信しています」と自ら切り出しました。これにより、誠実さをアピールしつつ、入社後の「ばれる恐怖」からも解放されました。
傷病手当金をもらっていた期間を「充電期間」と定義し直す
傷病手当金をもらっていた期間を「何もしていなかった空白期間」と捉えると、自己肯定感が下がります。この期間を「次のキャリアのために心身を整え、自分自身を見つめ直すための充電期間」と定義し直してください。
私はこの期間中に読書をしたり、業界の研究をしたりしていました。面接では「休養を取りながらも、将来のキャリアについて深く考え、御社のような企業で働きたいという意欲を養っていました」と語りました。過去を変えることはできませんが、過去の意味づけは今のあなた次第でいくらでも変えられます。
まとめ
傷病手当金を受給していた事実は、システム上で自動的に転職先に通知されることはありません。しかし、源泉徴収票や住民税といった公的な手続きを通じて、間接的にばれるリスクは避けられません。
「絶対にばれない方法」を探して小手先の工作をするよりも、ばれたとしても問題ない状態を作っておくことの方が重要です。それはすなわち、現在は心身ともに健康であり、業務に支障がないことを証明できる準備をしておくことです。
私が20社落ちた末に気づいたのは、企業は「傷のない完璧な人間」を求めているのではなく、「自分の弱さと向き合い、それを乗り越えて貢献してくれる人間」を求めているということです。
傷病手当金をもらうことは恥ずかしいことではありません。それはあなたが今まで一生懸命働き、保険料を納めてきた権利です。その権利を使って回復したのですから、これからは胸を張って新しいキャリアを歩んでください。過去の受給歴そのものではなく、今のあなたの働く姿勢を見てくれる企業は必ずあります。


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