アルバイト、パート、派遣、契約社員など、いわゆる「非正規」の仕事が多いと、履歴書を書くたびに「どこまで書くべきか」「正社員以外は書かない方がいいのか」と悩む人は少なくありません。非正規の経歴を全部書けば「落とされそう」、かといって書かないと「空白期間だと思われてバレるのでは」と不安になるはずです。
この記事では、20代で転職回数8回、1年間の空白期間ありという汚い職歴を抱え、30歳の求職活動では20社以上不採用になりながらも、独自の履歴書クリーニング法でたった1か月のうちに複数の優良企業から内定を獲得したプロの転職アドバイザーが、「非正規 履歴書 書かない」というテーマについて、PREP法で分かりやすく解説します。
非正規の仕事は履歴書に書かない方がいいのか 結論と基本スタンス
結論 全てを書かなくてよいが「戦略的に選んで書く」が正解
結論から言うと、非正規の仕事については、全部隠す必要はありませんし、全部書かなければいけないわけでもありません。
大事なのは、「応募先の企業にとって意味がある経歴」を選んで書くことです。
短期のアルバイトまで全て細かく書けば、履歴書は読みづらくなり、「落とす理由探し」の材料を自分で増やしてしまいます。一方で、非正規の仕事を丸ごと消してしまうと、長い空白期間が生まれ、「働いていなかった人」と見なされるリスクが高まります。
つまり、「非正規＝書かない」ではなく、「非正規の中から、書くべきものと省いてよいものを選ぶ」という発想が必要です。
非正規か正規かより「応募先にとって意味があるか」が重要
採用担当者が最も知りたいのは、「この人はうちの会社で活躍できそうかどうか」です。正社員か非正規かの区別はあくまで一つの情報に過ぎず、それ以上に「どんな仕事をしてきたか」「どんなスキルがあるか」を重視します。
例えば、事務職の募集に応募するなら、派遣事務やアルバイトでのデータ入力経験は、非正規であっても十分アピール材料になります。逆に、応募職種とまったく関係のない非正規をいくつも並べても、採用側にとっては判断材料になりにくいのが実情です。
だからこそ、「非正規だから隠す」のではなく、「応募先の目線で見たときに意味のある経験かどうか」で書くか書かないかを判断するべきなのです。
非正規の経歴を履歴書に書かないときに起こりがちな誤解
空白期間だと誤解され「働いていなかった人」と見られる
非正規の仕事を全て省くと、その期間は履歴書上「何もしていない時間」として空白になります。結果として、採用担当者には「この期間は無職だった」「社会から離れていた」と受け取られがちです。
特に、半年から1年以上の長い期間を非正規で過ごしていた場合、それをそのまま消してしまうと、「ブランクの長い人」と判断され、書類選考で不利になります。実際には派遣やアルバイトで働いていたのに、「働いていなかった人」と誤解されるのは非常にもったいない状態です。
非正規の仕事をどこまで書くかを考えるときは、「ここを消すと、この期間は完全な空白に見えるか」を必ず確認しておく必要があります。
公的記録やネット情報と食い違うと「何か隠している」と疑われる
派遣や契約社員として社会保険に加入していた場合、その事実は公的な記録として残ります。新しい会社に入社するとき、人事が雇用保険や年金の手続きを行うと、過去の加入期間や事業所名が一覧で表示されることがあります。
その際、履歴書には書かれていない会社名や期間があると、「なぜこの経歴を隠しているのか」と疑問を持たれる可能性があります。また、転職サイトやSNSに登録していた職歴と履歴書の内容が食い違うと、「どれが本当なのか」と不信感を持たれかねません。
非正規の仕事を省くこと自体は構いませんが、公的記録と大きく矛盾するような消し方をすると、「非正規だから」ではなく「隠しているから」落とされるリスクが高まります。
非正規の仕事を書くか書かないかを判断する三つの基準
社会保険加入の有無と勤務期間で「書くべき度合い」が変わる
一つ目の基準は、「社会保険に加入していたか」「どれくらいの期間働いていたか」です。社会保険に加入していた非正規の仕事は、公的な記録に残るため、完全に消してしまうと矛盾が生まれやすくなります。
また、同じ非正規でも、1週間の単発バイトと2年間の長期派遣では、履歴書に書くべき重みが違います。数年レベルで働いていた非正規は、職歴として扱っても何ら不自然ではなく、応募先から見ても「継続して働ける人」という評価につながりやすいです。
逆に、数日〜1か月程度の極端な短期は、まとめて書くか職務経歴書で補足するなど、「詳しく書き過ぎない整理」が有効なこともあります。
応募職種との関連性が高い非正規は積極的に書くべき
二つ目の基準は、「応募職種との関連性」です。非正規であっても、応募先の仕事内容に近い経験であれば、それは立派な実務経験として評価されます。
例えば、コールセンターのアルバイトは、営業や接客の応募であれば「電話対応力」や「クレーム対応力」としてアピールできます。コンビニや飲食店のパートは、「レジ対応」「在庫管理」「チームでの連携」など、販売・サービス職に直結するスキルにつながります。
このような「関連性の高い非正規」は、正社員かどうかに関係なく、積極的に履歴書に書いた方が得です。
あまりに短期でバラバラな非正規はまとめて整理する
三つ目の基準は、「短期でバラつきが大きい非正規の扱い方」です。1〜2か月程度の非正規を何社も転々としている場合、それを全て個別に書くと、「すぐ辞める人」というイメージが強くなってしまいます。
こうしたケースでは、「複数の飲食店でホールスタッフとして勤務」「短期派遣として事務補助を複数社で経験」といったように、複数の経験を一つにまとめて書く方法があります。期間も「20XX年〜20YY年 短期派遣として複数社で事務サポート業務に従事」のように表現すれば、「バラバラ感」を抑えつつ、経験の軸だけを伝えることができます。
「全部隠す」のではなく、「読みやすい単位にまとめる」という発想を持つと、履歴書の印象は大きく変わります。
プロの転職アドバイザーが実践した 非正規まみれの汚い職歴の整え方
転職回数8回と1年の空白期間で20社以上不採用だった過去
著者自身、20代のうちに正社員・非正規を含めて8回の転職を経験し、その途中で約1年間の空白期間も抱えていました。履歴書にはアルバイトや短期派遣まで全てを細かく書き込み、「正直であること」だけを大事にしていました。
しかし、30歳で勤務先が廃業し、本格的に求職活動を始めた際、その履歴書で20社以上連続して不採用という現実に直面しました。今振り返ると、採用担当者が目にしていたのは、「短期離職と非正規がズラリと並んだ紙」であり、「何ができる人なのか」「どんな軸で経験を積んできたのか」が全く伝わっていませんでした。
この経験から、「非正規を全部書く＝誠実」ではなく、「相手にとって意味のある経歴だけを整理して見せることが、本当の誠実さだ」と痛感しました。
非正規を全部書くのをやめ「軸になる経験」に絞った結果
そこで著者が行ったのが、履歴書クリーニングです。まず、これまでの正社員・非正規を全て紙に書き出し、「仕事内容の共通点」と「応募したい職種とのつながり」を徹底的に探しました。
その結果、正社員・派遣・アルバイトを問わず、「顧客対応」「事務処理」「営業サポート」といった共通する経験が多いことに気づきました。そこで、「職種ごとのバラバラな職歴」ではなく、「顧客対応と事務を中心に経験を積んできた人」という見せ方に切り替えたのです。
具体的には、似た非正規はまとめて一つの職歴として記載し、あまりに短期のものは職務経歴書や面接で補足する形に変更しました。その結果、同じ事実でありながら履歴書全体の印象が大きく変わり、書類通過率も一気に上がり、最終的には1か月で複数の優良企業から内定を得ることができました。
非正規の仕事を省きつつ評価を落とさない具体的テクニック
似た非正規は一つの経験としてまとめて書く
非正規が多い人ほど効果的なのが、「似た経験を一つにまとめる」というテクニックです。例えば、飲食店のホールやキッチンを何店舗も経験しているなら、「20XX年〜20YY年 飲食店にて接客・調理補助業務に従事（複数店舗）」という形にまとめられます。
事務系の短期派遣が多いなら、「20XX年〜20YY年 派遣社員として複数社で一般事務・データ入力業務を担当」といった書き方も可能です。このようにすれば、転々としている印象を和らげつつ、「どんな仕事をしてきたか」という本質だけを伝えることができます。
一社一社細かく書かなくても、「どの分野で、どんな役割を担ってきたか」が伝われば、採用担当者にとっては十分な情報です。
履歴書は簡潔にし職務経歴書や面接で必要な分だけ補う
履歴書とは本来、「経歴の概要」を伝えるための書類です。細かい仕事内容や短期の非正規まで全て詰め込むと、かえって読みづらくなり、本当に伝えたい強みが埋もれてしまいます。
そこで、履歴書では「軸になる経験」と「長期で働いた非正規」を中心に簡潔に書き、詳しい内容や短期の非正規は職務経歴書や面接で必要に応じて説明する、という役割分担を意識してみてください。
このように情報のレイヤーを分けることで、「非正規を省きつつ、聞かれたときにはちゃんと説明できる」という状態を作ることができます。
非正規から正社員を目指す人が今すぐやるべき三つのステップ
全ての非正規経験を洗い出して「武器になる部分」を抽出する
まずは、これまでの非正規経験を全て紙やメモアプリに書き出してください。雇用形態や期間、仕事内容、身についたスキルなどを、思いつく限り並べていきます。
そのうえで、応募したい職種と照らし合わせながら、「ここは武器になる」「ここは今回は使わない」という観点で仕分けを行います。例えば、事務職を目指すなら、「データ入力」「電話対応」「資料作成」などの経験を優先的に残し、全く関係のない単発バイトは後回しにする、といったイメージです。
この作業を通じて、「正社員か非正規か」ではなく、「どんな場面で使える経験か」という視点に切り替えられるようになります。
応募先の仕事内容と結び付けてストーリーに言い換える
次に、残したい非正規経験一つ一つについて、「応募先の仕事とどうつながるか」を考え、言葉を整えていきます。
例えば、コンビニのアルバイトなら、「レジ打ち」ではなく「現金管理とミスのない会計処理」「常連客とのコミュニケーションを通じた信頼関係づくり」と表現すれば、事務や営業にも通じるスキルとしてアピールできます。
派遣事務なら、「言われた作業だけこなしていました」ではなく、「営業担当が提案に集中できるよう、資料作成とデータ整理を担当」といったように、「誰の役に立っていたか」まで含めて表現すると、経験の価値がぐっと伝わりやすくなります。
履歴書・面接・ネットプロフィールの情報をそろえる
最後に、履歴書、職務経歴書、面接で話す内容、そして転職サイトやSNSなどのプロフィールに、大きな矛盾が出ないように整えておきましょう。
履歴書では非正規を一部省いているのに、ネット上のプロフィールでは細かく全て書いていると、「どれが本当なのか」と疑われる可能性があります。省くところは省きつつも、「期間」「職種」「業界」の大枠はそろえておくと、安全性が高まります。
一貫した情報であれば、「正社員経験は少なくても、非正規で実務を積んできた人」として、採用側からの信頼を得やすくなります。
まとめ
非正規の仕事を履歴書に書かないこと自体は間違いではありませんが、全てを消してしまうと「空白期間の長い人」と見なされ、不利になる場合があります。また、公的記録やネット上の情報と大きく矛盾する消し方をすると、「非正規だから」ではなく「何かを隠しているから」落とされるリスクも生まれます。
本当に大切なのは、「非正規か正規か」ではなく、「応募先にとって意味がある経験かどうか」で選んで書くことです。似た非正規は一つにまとめ、応募職種と関係の深い経験を軸に据えれば、汚い職歴でも十分に戦える履歴書に変わります。
転職回数8回と1年の空白期間を抱えた著者自身も、非正規を含む全ての経験を棚卸しし、「見せ方」と「選び方」を変えたことで、複数の内定を勝ち取りました。あなたの非正規経験も、整理と言い換え次第で、立派な武器に変わります。
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